FM三重『ウィークエンドカフェ』2017年8月19日放送

今回のお客様は『和菓子とアイス饅頭 寿恵広』の青木活人さん。
お店は大正12年の創業で、青木さんが3代目。
おじいさんが始められたそうです。
アイス饅頭は、昭和25年から販売を開始。
60年以上たった今でも当時の製法を守りながら、今の味を作っているそうです。
冷凍庫から出して10分くらいたったら食べごろ。
アイス饅頭をいただきながら、青木さんとのトークタイムを楽しみましょう。

イス饅頭はなかなか溶けない!

『アイス饅頭』はつまり、ミルクとぜんざいのアイスキャンディ。
プリンの型をひっくり返して、そこにミルクを入れるんですが、その時点でスティックを刺しておきます
すると縁に沿って斜めに入るので、それを凍らせます。
斜めに刺さることで食べやすいという利点があります。
傘のように真ん中に刺してあると食べにくいんですね。
斜めだと食べ始めたい角度が選べるので、非常に良いです。
このアイス饅頭、最初はとっても硬いのですが、その理由は持ち帰りのお客さんがとても多いから。
店頭の冷凍ケースは−28〜−30℃と、思いっきり冷やしてあります。
だから新聞で包めば1時間くらいは保ちます。
発泡スチロールの箱も用意してあるので、2時間くらいはお持ち帰りに対応しています。

 

じいさんの代から作ってきたアイス饅頭

作り方は昔のままです。
ぜんざいは小豆と砂糖とブドウ糖と飴、それ以外は使いません。
基本的にはそれだけの材料であずきを炊いていきます。
自然というか、懐かしい味と言われるのはそんな理由だと思います。
味は、丹波大納言、あずき、抹茶、黒糖の4種類。
和菓子で使う粒の大きい大納言小豆と、北海道産の小豆。
和菓子でよく使う抹茶味と波照間産の黒糖味。
北海道から沖縄から、いろいろな味を楽しむことができます。
おじいさんの代の頃の戦前、夏場は和菓子があまり売れないため、アイスキャンディを作っていました。
桑名はアイスキャンディを作っているお店が多く、組合があったんですね。
戦後に名古屋からアイス饅頭を仕入れていたのですが、組合の方から桑名の和菓子店でも作らないかという話があり、作り始めたそうです。
それが昭和25年頃のこと。
当時よりは少なくなりましたが、今でも桑名では何軒かの和菓子店がアイス饅頭を作っています。
各店がこだわりを持ち、それぞれのお店の味になっていったという感じですね。

 

きつけの整体の先生のリクエストから生まれた黒糖味

最初はアイス饅頭にそんなに力を入れていませんでした。
私は大学を卒業後、システムエンジニアの仕事をした後、実家の和菓子屋を継ぐことになりました。
寿恵広の強みはなんだろう?・・・と考えたときに、昔から愛されているアイス饅頭がありました。
そこでこれからはアイス饅頭に力を入れようと。
種類を増やそうと。
もともと抹茶味は和菓子の定番でありました。
さらに一時期、名古屋の三越で販売していた時、新しい味が欲しいとの要望がありました。
そこで、前から良い小豆でやってみたいとの思いがあり『丹波大納言』のアイス饅頭を作るようになったのです。
黒糖味は、通っていた整体の先生が沖縄が大好きで、黒糖のアイス饅頭をリクエストされたのがきっかけです。
波照間の黒糖が手に入れやすいのと美味しいのと、それから和菓子で使っていたのもあり、波照間産の黒糖を使ったアイス饅頭が完成しました。

実は今、いちごのアイス饅頭を開発しているところなんです。
まだ販売はしていませんが、長島町の『のらくら農園』作っているいちごをウチに持ってきて、何かに使ってほしいと。
そこでいくつか試作を繰り返したところ、いちごの酸味とあずきの甘さがとってもいいバランスで、想像していたものよりも遥かにおいしいアイス饅頭ができました。
アイス饅頭は丸っこいので、そのまま1個入っています。
そろそろ販売を始められるかもしれませんよ。

 

婚式では饅頭を配り、嫁に嫁がせた家から一斗の鏡餅を送る風習があった

歴史を紐解いていくと、古くから残っているお店は、そんなにたくさんありません。
有名なところでも前身は米屋さんだったりしますし。
うちも大正に入ってからはじめたお店です。
街として、お菓子を使うことがけっこう盛んでした。
結婚式の日に饅頭を投げたり、今では信じられないかもしれませんが、結婚をした初めての正月に、奥さんの実家から旦那さんの家に一斗の鏡餅を一対送る風習があったそうです。
一斗といえば米で15キロなので、一対20キロくらいの餅になります。
この数十年はもう見かけませんが、そういう文化がかつては残っていたんですね。
家の人数が減っているので、もらう方も困りますし、自然になくなっていったようです。
しかし他の地域から比べると、桑名の人は和菓子と密着しています。
お茶もこだわっているようですし。
石取祭もそうですが、昔のものがけっこう残っていますね。